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2010年6月27日

NHK「目撃!日本列島」と私たちの支援姿勢の相違について-スタッフ一同の意見をまとめました

Filed under: お知らせ,スタッフBlog — 事務局 @ 10:23 PM

NHK「目撃!日本列島」と私たちの支援姿勢の相違について

2010年6月28日

大阪希望館・相談センター スタッフ一同

  6月26日(土)にNHKが関西圏で放映した「目撃!日本列島」で放映された大阪希望館の支援趣旨の表現は、私たちの基本的な支援姿勢と大きく違うものでした。

 タイトルに「お前らを見捨てへん」と出ていること自体、その趣旨が違っていました。私たちは、支援の対象者である、住むところも仕事も失った人たちに対して、彼らがいかにスタッフよりも年が若いとしても「おまえら」というようなえらそうな表現や態度をとったことはなく、あるいは「支援する側」と「される側」の間に存在する壁が、あたかも簡単に乗り越えられるかのような錯覚をして、支援をおこなってきたのでもありません。

  大阪希望館は「誰も社会からこぼれ落とさない」ことを目的に活動する市民のセーフティネットワーク運動です。その中のひとつである「相談センター」は、「誰もホームレスに陥らせない」ことを目的に、その支援対象の中心に「ホームレス状態の若者たち」を置いています。決して「若者自立支援」の中の「若年ホームレス支援」ではありません。ましてや「見捨てない」などと、彼らに対して高みに立った意識で活動をおこなっているのでもありません。

 仕事も住まいも失って、家族に頼るわけにもいかずホームレス状態に追いやられた彼らの絶望や不安に向き合い、彼らがみずから生きづらさを乗り越えて希望を見つけ、社会を生き抜く力を培っていけるよう、ときには下から、ときには横から、ときには親代わりになって、一緒に考え、生きる道を一緒に探していこうというのが、私たちの基本的な姿勢です。

  NHKの番組では、取材対象入居者は彼らの表面だけが取り上げられ、背景や心の葛藤などが描かれない一方で、特定のスタッフがていねいに「指導・教育」している場面ばかりが目立っています。その結果、希望館が、あたかも「人生経験豊かな(立派な)大人」が「未熟(でダメ)な若者」を指導して社会の規律を教え、社会で通用するまでに「たたきあげる」場所であるかのように映ってしまっています。これでは、私たちの支援趣旨とは全く違うものになっていると言うしかありません。

  取材に応じてくれた入居者、巣立っていった卒業者、希望館を応援してくださっている方々には、本当に申し訳ない限りです。

2010年6月19日

励まし合える仲間や応援してくれるスタッフと出会えた-利用者の声vol.2

Filed under: お知らせ,スタッフBlog — 事務局 @ 11:49 PM

利用者の声vol.2に文章を寄せていただいたのは、Mさん(28歳)。Mさんは大阪希望館での生活を経て、今は民間会社に就職し、アパートを借りて自立されています。

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私は、地元A県で民間会社に勤めていました。 その頃、母と住んでいたのですが、その当時母も体調が悪く、生活保護を受けたいと言っていました。しばらく日が経ち、母は突然、自宅に帰ってこなくなりました。更に母宛に50万もの取り立ての張り紙が玄関ドアに張られており、それがきっかけで私は会社をやめざるを得なくなったのです。

今まで住んでいた部屋には当然住めなくなり、私は渋々B県で派遣社員として働くことになったのです。しかし、出勤日数があまりにも少なく寮費だけで給与の半分以上もっていかれる上に、派遣会社の社員には遠回しに退職を促され、私は我慢できず派遣会社を飛び出し、叔父のいる大阪へ足を運びました。しかしそこにはもう叔父は住んでおらず、初めてきた大阪という土地で途方にくれました。そのときの手持ちは7千円・・・。

自然と足は梅田の方に向き、ネットカフェへ。ネットカフェのブースで私は自殺サイトをひたすら見ていました。それと並行して「まだやりたいことがいっぱいあったのに・・・。」と思っていたら偶然にもチャレンジネット大阪のページをみつけたのです。それが大阪希望館との出会いでした。

私は今現在この大阪希望館とスタッフの方々に支えてもらった上で、再び人並の生活をさせてもらっています。周りには励まし合える仲間や応援してくれるスタッフがいて、私は大変幸せな環境にいるんだなと実感しています。また、大阪希望館を支援してくださっている方々には本当に感謝しています。 このあたたかい場所の存在を知らない人や、本当にこの場所を必要としている人達の為に、いずれは私もこの大阪希望館が末永く続く様にお手伝いが出来ればと思います。

2010年6月6日

中島岳志さん招き、シンポジウムを開催

Filed under: お知らせ,スタッフBlog — 事務局 @ 10:33 PM

中島岳志5月22日、自治労大阪府本部主催の「地方自治研究集会」で、北海道大学准教授の中島岳志さんを講師に招いて、「市民が作るセーフティネット『大阪希望館』」をテーマとした分科会が開催されました。

中島さんは『脱『貧困』の見取り図をどう描くか」をテーマに講演。赤木智弘さんの「希望は、戦争」論や秋葉原事件を読み解く中から、「経済的貧困」が「関係の貧困」に直結する「承認格差社会」が出現していることを指摘。中島さんが尊敬する福田恒存の言葉「なにをしてもよく、なんでもできる状態など、私たちは欲してはいない。ある役を演じなければならず、その役を演じなければ、他に支障が生じ、時間が停滞する-ほしいのは、そういう実感だ」を手がかりに「希望は、包摂!」と、方向付けられました。そして釧路市における生活保護行政の実践や中島さんが中心となって運営されている札幌市発寒商店街での「カフェハチャム」の取り組み、札幌市と協働で取り組む「ビッグ・イシュー」販売活動など豊富な事例を基に、ソーシャルインクルージョンの可能性に脱『貧困』の展望を示唆されました。(中島さんの講演については現在、テープ起こし中です。完成後より詳しく報告させていただく予定です。)

沖野充彦分科会では、中島さんの講演ののち大阪希望館沖野事務局次長やふたりの利用者代表から大阪希望館の活動報告を受け、その後会場の参加者も交えトークセッションを行いました。後半は地域で障害児者とともに生きる取り組みを20年以上にわたって継続しておられるNPO法人「あとからゆっくり」理事の森泰輔さんも加わり、「社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)」の重要性を確認できた意義ある分科会となりました。

なお、中島さんは分科会前日の21日、「大阪希望館」の相談センター及び支援居室の見学に訪問してくださり、希望館スタッフや自治労府本部のメンバーと交流を図っていただきました。中島さん、二日間にわたり、ありがとうございました。

相談センターにて相談センターにて

支援居室にて支援居室にて