大阪希望館の相談・支援概要

2009年9月1日
大阪希望館事務局次長 沖野充彦

1、大阪希望館とは何か

【目的】

住まいをなくした人の再出発を支援する活動を通して、大阪のまちを大きなセーフティネットにする市民の共同事業を促進し、誰もこぼれ落とさない社会の形成をはかる。

【事業の内容】

  • 野宿生活になる前に受け止めて、公的セーフティネットにつながるまでの緊急的な就労と生活・住まいの支援をおこなう
  • 再出発の方向や方法を一緒に模索するための、時間と場所・相談を提供する支援
  • 再出発後も社会の一員としてとどまることができるための継続的な支援
  • 市民の社会資源を豊富化と、支援するためのネットワークの拡大
  • 新たなモデル福祉事業として行政からの支援および協働化
  • 誰も使い捨てにされない、誰もホームレスにされない社会をつくるための啓発

【希望館の特徴】

「なんとかなる。なんとかする」の精神=「あれば拡げる、なければつくる社会資源」

大阪希望館・ネットワーク

大阪希望館・利用の流れ

  • 施策のもっとも薄いところである「住まいをなくした後、野宿生活になる前」に、再出発を支援する取組み。(相談する窓口としてはOSAKAチャレンジネットがあるが、生活保護施設や自立支援センターのような寝場所と生活を支える資源がなく、窓口での相談者の振り分けにとどまらざるをえない)
  • 施設をつくるのではなく、今あるまちの民間住宅や民間事業を「社会資源」と位置づけ、地域や市民のネットワークで支援する。
  • ・ 真ん中に支援拠点(相談センター)を、まわりに支援居室や臨時就労などを配置することで、相談者と支援者が適度な距離を保ちながら関係性を深めていく。
  • 「就職活動」か「生活支援」か、ではなく、その真ん中に就労リズムと就労意欲を継続するための就労訓練事業をはさむ。(食事の提供や金銭の給付・貸付はできるだけおこなわず、就労訓練事業で得た作業手当で生活費と就職活動などの経費を捻出する。寝場所は無料提供)
  • 再出発後も、仕事や生活の不安や悩みにぶつかったときに、いつでも相談できる長期的な支えの場として機能していく。
  • 行政の施策にだけ頼るのではなく、民間の資金と資源をつぎ込んででも、やらなければならないことはやる。そのことを通して、行政施策の実施と豊富化を引き寄せる。

【支援方法の特徴】

  • 相談者を社会資源にあわせるのではなく、それぞれに適した社会資源(組合わせ方をふくめて)を活用する。そのためには、居宅保護か施設入所か、就職活動か自立支援センターか職業訓練かなど再出発の方法や、どういう支え方が必要かなどを、あわてて決めるのではなく、2週間程度の落ち着ける「場所と時間」を提供して、相談しながら決めていくことが欠かせない。その間に、必要に応じて、専門医療の受診や職業カウンセリングなども組み込みながら、アセスメントを実施する。
  • 入所者を送り出した後も支えることができるように、相談センターは入所中の支援であると同時に、アフターフォローの支援拠点にしていく。

【入所後の支援メニュー】

大阪希望館・支援メニュー

  • 「訓練・生活支援給付」 ハローワークの指示で公共職業訓練を受けた場合に、訓練期間中の生活支援として、単身者に月10万円(その他貸付で月5万円)が支給される国の制度
  • 「就職安定資金融資」 事業主都合や期間満了で離職し、それに伴って寮や借上げ住宅から退去しなければならず、住居を失った場合に、住居を確保する費用を融資する国の制度
  • 「自立支援センター」 住まいや仕事がなく路上生活を余儀なくされる人に、寝場所と食事などを提供して、就職活動と居宅確保を支援する自治体の施設。大阪市内に5か所、堺市に1か所ある。債務整理や免許取得の支援もしてくれる。

2、開設に向けた取組み

[1]土台(釜ヶ崎支援機構では)

  • 2001年以降の福祉相談部門の取組み=生活保護制度に乗せるだけでなく、再野宿や孤独死にならないために、それぞれに応じた保護の方法や支援の方法・使うべき社会資源を申請前から検討して支援方針を立て、申請後は必要に応じて金銭管理や服薬管理・受診付添や様態・状態の変化への対応・ケース検討会議などを通してアフターフォローしていく。
  • 2005年以降お仕事支援部開設による就職支援の開始=釜ヶ崎には就職活動の前提となる寝場所や生活支援の場が、あいりんシェルターか生活ケアセンター以外にないため、生活保護申請のための求職活動支援や、自立支援センター入所支援に傾かざるをえない状態。
  • 2007年「若年不安定就労不安定住居者聞取り調査」「厚生労働省・住居喪失不安定就労者実態調査」を実施し、2008年からOSAKAチャレンジネットと連携した「ネットカフェ生活者」支援を開始。市内対策部設置=やはり行政施策としては寝場所や生活支援は実行されず、「相談」のみの対応であったため、NPO独自で釜ヶ崎の内外に簡宿転用アパート3室、ワンルームマンション3室、空きアパート6室を有償・無償で借り上げて、支援居室を設置=短期的就労支援→簡宿転用、長期的就労支援→空きアパート、生活保護申請のために経過観察必要→ワンルームと、支援の方向や当人の状態に応じて使用し、福祉相談部門とお仕事支援部を支援拠点にする。さらに臨時的な就労訓練作業を提供して、就労リズムの維持と生活支援をおこなう。

               ↓

  • ホームレス状態にあるそれぞれの人に応じた支援をするために、釜ヶ崎での支援システムを形成。

[2]相談者の増加

  • 今年1月以降の相談者(特に派遣や非正規・一時的には建設日雇出身の若年者)が増加。チャレンジネットで約3~4倍、NPO釜ヶ崎で約5~7倍。すぐに就労につながる人ばかりではなく、軽度でも知的障がいや発達障がい・精神疾患や依存症を抱える若年者からの相談も多い。
  • 入所希望者の増加により、自立支援センターに入所するにも2~3週間待たねばならず、その間生活ケアセンターにも入れない状態が続いた。

[3]北区での設置

  • 相談者が釜ヶ崎にたどり着く前に疲れきっている。
  • 釜ヶ崎には支援するための社会資源はそれなりにあるが、あいりん対策にのみ流し込んではいけない。
  • 就職安定資金融資制度など制度が整備されていっても、そこからこぼれ落ちてくる人たちは後を絶たない。また「派遣村」や一時的な相談会はそれなりに意義はあるが、生活保護制度に押し上げたとしても、その後のフォローがなければ当人の「やる気」のみに頼って就労努力を求めてもなかなか結実しない。野宿生活になる前に受け止めて継続的に支援できる恒常的な社会資源が、小さくてもモデル的に必要。

[4]市民ネットワーク

  • 受け止めて支援できる対象者は一部にとどまり、それ以上の人たちには支援の手が届かない。より広く受け止めて出口も整備する市民ネットワーク作りが必要。
  • 行政に実施を要求するだけでなく、自らセーフティネットモデルを作り、そこに施策を引き寄せていく市民運動が必要。
  • 7月11日 大阪希望館運営協議会を設立し、相談者・入所者への支援だけでなく、啓発活動・ネットワーク作りなどを幅広く進めていく。(代表幹事・大阪労働者福祉協議会 山田保夫会長、カトリック大阪司教区 松浦悟郎補佐司教、事務局長・連合大阪 坂本眞一副事務局長、事務局次長・金光教羽曳野教会 渡辺順一教会長、事務局次長・NPO釜ヶ崎支援機構 沖野充彦事務局長)

[5]社会資源としての希望館の役割 

  • 自立支援センターや生活保護施設など公的社会資源とならぶ民間社会資源のひとつ。
  • 相談者の窓口は、OSAKAチャレンジネット。そこから、臨時的宿泊提供=チャレンジネット(大阪労福協)、若年で就労に近く北区での支援が適合=希望館、若年で半就労半福祉が適合=NPO釜ヶ崎南分室、専門医療や金銭・服薬管理が不可欠で病状・状態の変化に注意を要する=NPO釜ヶ崎福祉相談部門、という役割分担。

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